アンティークROLEX cal.1560
今回ご紹介するのは、1969年に国産初のクォーツ時計が登場する以前の、1960年代に製造された名機——アンティークROLEX「オイスターパーペチュアルデイト Ref.1500 / cal.1560」のオーバーホール事例です。
このモデルは、ROLEXの中でも特に評価の高い cal.1560ムーブメント を搭載しており、その精度と耐久性から、今なお多くの愛好家に支持されています。
01. 見積時の状態
修理費用目安:¥15,400-
修理前の状態
止まりの状態で入庫しました。
不具合原因
添付画像をご覧いただくと、テンワ(ヒゲゼンマイが往復運動させる金色のパーツ)のすぐ左に、真鍮の棒状の部品が確認できます。
この部品は、通常の秒規制レバーがないため、マイクロステラ調整の際にテンワを一時的に強制停止させる特殊なパーツです。
しかし、この棒がヒゲゼンマイに接触しており、ムーブメントが完全に停止していました。
また、美観上の問題として、ネジ全体にキズがあり、以前の作業者がドライバーを適切に調整せずに回していた痕跡が見られました。
02. 作業開始
修理内容
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分解前の不具合修正
テンワ横の真鍮棒の根元にある溝をマイナスドライバーで調整し、テンワやヒゲと干渉しない位置に移動させました。
この調整により、ローターとも干渉せず、仮に動くようになったムーブメントで不具合の原因を特定できる状態にしました。 -
ムーブメントの完全分解洗浄
汚れた油を石油系ベンジンで落とし、超音波洗浄機で微細な汚れを取り除き、乾燥させます。 -
ゼンマイ交換
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各部の注油と組立調整
アンティークは固定ヒゲ持ち式で調整が面倒な場合がありますが、ROLEX cal.1560は可動ヒゲ持ち式で、ネジを緩めるだけで調整可能です。
組立注油後、停止していたムーブメントは約280°程度動くようになりました。
調整前の歩度は+20秒/日ほどでしたが、BONDIC®️(紫外線硬化樹脂)でテンワに微細な重りを追加し、進み傾向を抑える微調整を施しました。
03. 修理完了後の実測結果
修理後の計測スペック
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平置き:+6秒/day、振り角282°
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リューズ下:+2秒/day、振り角254°
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実測パワーリザーブ:48時間
特筆すべきは、修理後のタイムグラファーでの計測結果です。
添付画像のようにノイズのない、美しい右肩上がりのラインが得られ、機械の健全性が視覚的にも確認できます。
04. まとめ
今回の事例では、部品一つの干渉が時計全体の動作を止めてしまうことがある一方で、適切な知識と技術を持って対処すれば、本来の性能を取り戻すことが可能です。
アンティークウォッチの魅力は、歴史や外観だけでなく、こうしたメカニカルな発見と復活のプロセスにもあります。
皆さまの大切なお時計も、ぜひ一度ご相談ください。